ウェブサイトの目的を達成するためには、目的に沿ったユーザーをウェブサイトに集める必要があります。
闇雲に情報を発信しているだけでは、いつまでたってもゴールにたどり着くことはできません。
そのような状況に陥らないために、「誰に」向けてウェブサイトを制作、運用するのかをしっかりと設定することが大切です。
マーケティングの世界では、商品やサービスの対象となる人物像のことを「ペルソナ」といいます。
このレクチャーでは、ペルソナとはなにか、ペルソナの重要性、Webマーケティングにおけるペルソナの設定方法などを解説します。
ペルソナとは?
まずは、マーケティングの世界における「ペルソナ」の意味について解説します。
ペルソナとは、商品やサービスの対象となる架空の人物像のことを指します。
氏名、年齢、住所、職業といった大きな情報だけでなく、趣味や休日の過ごし方、好きな食べ物、将来の夢、悩み、人生観など、具体的に設定して、ひとりの人物像をつくりあげます。
ペルソナを設定することで、対象となるユーザーのイメージ像が掴みやすくなり、ユーザー目線での商品やサービスの開発、販売をおこなうことができるようになります。
ペルソナを設定せずに商品やサービスの開発、マーケティングをおこなうと、うまくいかず失敗してしまう可能性があります。
ターゲットとペルソナの違い
ペルソナと似た意味をもつマーケティング用語に、「ターゲット」という言葉があります。
どちらも商品やサービスの対象となるユーザーを設定する用語ですが、ユーザーの設定方法が異なります。
ターゲットは、商品やサービスの対象となるユーザーの、年代、性別、学歴、年収、既婚未婚などの「属性」で分類し、設定します。対してペルソナは、ひとりのユーザーに絞り、氏名や年齢、職業、住まい、趣味など、細かく設定をします。
- ターゲットの場合:30代、女性、主婦、既婚
- ペルソナの場合:斎藤 柊子、35歳、女性、主婦、既婚(夫、息子、娘の4人家族)、神奈川県横浜市在住、休日は家族でショッピング、趣味はヨガ・・・
ペルソナを設定する重要性
商品やサービスを開発、販売するときは、対象となるユーザーの心理を理解することが大切です。
ペルソナを設定することで、ユーザー視点で商品やサービスの開発、マーケティングをおこなうことができるようになります。
たとえば、とある企業で新米ママに向けたアプリを開発、運用する企画が立ち上がったとします。チームは子どもがいない若い独身の人ばかり。子どもを産み育てたことのないメンバーは、新米ママがどんなアプリを必要としているのか、わかるはずがありません。
仮にアプリが完成したとしても、どのようなマーケティングをおこなえば新米ママがアプリをインストールし、利用してくれるのかわからず、失敗する可能性があります。
はじめにペルソナを設定することで、ユーザー像を絞り込めるようになり、共感度が高まり、ニーズが見つかりやすくなります。
ユーザー視点に立って物事を考えられることは、対象となるユーザーの行動や動機を理解しやすくなるメリットもあります。
なぜその商品を購入するまでに至ったのかを突き詰めることで、一方的な思い込みがなくなり、よりよい決断を導くことができるようになります。
また、複数人で商品やサービスの開発、マーケティングに携わっている場合、対象となるユーザーへの認識の違いの差が生まれやすくなります。
ペルソナを設定することで、共通認識が生まれ、認識のズレを防ぐことができます。
成功事例:「Soup Stock Tokyo」
ペルソナは、誰もが知っている有名企業の成功事例が多く存在します。中でも、「Soup Stock Tokyo」の事例がとてもおもしろく、参考になるのでご紹介します。
「Soup Stock Tokyo」は1999年に創業した、「食べるスープ」をコンセプトに掲げるスープ専門店。主に働く女性から支持を得ており、店舗のほとんどは駅ナカに構えています。
「Soup Stock Tokyo」は、商品を売り出すときに、チーム全員がコンセプト、イメージを共有するために、「秋野 つゆ」というペルソナを設定しました。
氏名 | 秋野 つゆ |
年齢 | 37 |
性別 | 女 |
性格 | おっとりしているがシッカリしており、自立している |
タイプ | 人のことはあまり気にせず、個性的・人と同じことは恥ずかしいこと・あまり細かいことは気にしない、大雑把・しかしこだわりは強い・知的で、多くを語らない・周りより、自分に興味あり |
つゆの評判 | 「化粧気はないのに、きれい。おしゃれに無頓着なのにセンスがよい。」、「プールに行ったら、いきなりクロールをしていた!」、「装飾的なもの、ファンシーなものは苦手で、シンプルなものを好む。」、「とにかくこの人のやることは、無理なくスッキリとかっこいい。」 |
信条 | 「こうじゃなきゃいけない」という考えは持たない |
料理 | 手軽でぶっきらぼうな料理ながら、うまいと大評判・国籍の偏りはなく、自分が判断する・おばあさんの影響で和食がベース・斬新な組み合わせも辞さない・素材の味を活かす・人をもてなし、喜んでもらい、コミュニケーションをするのが嬉しい |
理想 | 個性的で魅力的な人、すごい人、圧倒的にチャーミングなひとなどと出会うこと・そのひとたちと共有する考え、完成を具体的な形で社会に投げかけ、提案したい |
「秋野 つゆ」という具体的かつリアルな人物像をつくりあげることで、事業戦略だけでなく、「感覚的な部分」をチーム全員が共有できるようになりました。
彼女はどんな味の商品なら好きになってくれるか、どのような立地なら訪れるかと、味やインテリア、グラフィックなど幅広い分野にペルソナを活用した結果、オープンから1ヶ月で、初月の売上目標だった700万円をはるかに超えた、1,500万円の売上を達成するという快挙を成し遂げたのです。
ペルソナをWebマーケティングに活用しよう
Webマーケティングにおいても、ペルソナは非常に役立ちます。
ペルソナにもとづいてウェブサイトのレイアウト、発信するコンテンツの内容などを決定することで、目的を達成するためのウェブサイト制作をおこなうことができます。
ウェブサイトの運用時は、ペルソナにもとづいて、どのような発信方法なら目的に沿ったユーザーがウェブサイトを訪れるか、最適な運用方法を考えることができます。
効果的なウェブサイト制作、運用をおこなうために、ペルソナを設定してみましょう。
ペルソナの設定:女性のひとり旅情報ウェブサイトを制作、運用する場合
たとえば、私が女性のひとり旅情報ウェブサイトを制作、運用しようと考えているとします。
女性向けの旅行サイトを運営しているウェブサイトや、SNSでひとり旅の発信をしているアカウントを参考に、以下のようなペルソナを設定しました。
氏名 | 斎藤 柊子 |
年齢 | 26 |
性別 | 女 |
住所 | 神奈川県横浜市 |
仕事 | 営業事務 |
最終学歴 | 専修大学 |
収入・貯蓄 | 年収300万円・15万円 |
家族構成 | ひとり暮らし (実家に父、母、弟がいる) |
恋人・配偶者の有無 | なし |
性格 | 勝気・物事はハッキリさせたい・自分の時間を大切にしている |
趣味・特技 | 映画鑑賞・旅行・イラスト |
将来の夢 | 結婚 |
悩み | 異性との出会いがない |
人間関係 | 人付き合いは苦手だが、親友と呼べる友人が数人はいる |
好きなファッション | アウトドア系のスポーティなファッション |
好きなデザイン | かっこよくてシンプルなデザイン |
よく使うSNS |
ペルソナの設定は、詳細であればあるほど、リアルな人物像をつくりあげることができ、ウェブサイト制作、運用に役立ちます。
項目に関しては、ウェブサイトの目的によって変化させましょう。
ペルソナを設定するときのポイント
一般的なペルソナの設定方法は、既存の顧客にインタビューやアンケートをおこなって情報収集をすることからはじめます。時間と費用がかかりますが、的確なペルソナ設定がおこなえるため、非常に効果的です。
情報収集をするときは、行動の内容ではなく、その行動をした理由や動機に注目しましょう。
理由や動機を知ることで、より完成されたペルソナを設定することにつながります。
Webマーケティングの場合、商品やサービスの競合となるウェブサイトの分析も大切です。どのようなユーザーが訪れているのか、「SimilarWeb(無料/有料)」や「eMark+(有料)」などの競合調査ツールを使用して、分析をおこないましょう。
ペルソナは商品やサービスの開発、マーケティングの柱だから、一度決定したら変えられないと思い込んでしまう人もいます。
注意すべきポイントは、ペルソナは「正解」ではなく、あくまで「仮説」であるということです。
ペルソナに基づいて判断された内容は、あくまで仮説であり、絶対的な「正解」ではありません。
つまり、ペルソナを設定した後は、正しいかどうかを検証する必要があります。
一度決めたペルソナは、一定期間経過したら、見直すようにしましょう。
ペルソナを活用した具体例
いくら細かくペルソナを設定したとしても、活用しなくては意味がありません。
ここからは、今回設定した斎藤 柊子さんのペルソナをもとに、どのようにWebマーケティングでペルソナを活かしていけばいいか、一例をご紹介します。
まずは、ペルソナを活用して、ウェブサイトのレイアウトを考えてみましょう。
柊子さんは、勝気な性格で、サバサバしている女性。スポーティなファッションが好きで、デザインもシンプルでかっこいいものが好きです。
どのようなウェブサイトなら、柊子さんは訪れてくれるでしょうか。ファンシーでかわいらしいウェブサイトでは、一度は訪れても、リピーターになる可能性は低いです。コンテンツが多く、ごちゃごちゃとしたウェブサイトも、柊子さんは苦手そうです。
全体的なレイアウトはシンプルにし、わかりやすい構造のウェブサイトなら、柊子さんは気に入ってくれそうです。テーマカラーも、やわらかい印象を与えるパステルカラーよりも、パキっとした原色を使用した方が、柊子さんの好みに合致するでしょう。
つづいて、コンテンツの内容を考えてみましょう。
どのような旅行情報を掲載したら、柊子さんはコンテンツを読んでくれるでしょうか。
彼女は、旅行以外に映画鑑賞とイラストが趣味だそうです。それなら、映画のロケ地や舞台となった場所をまとめたコンテンツがあれば、興味を持ってくれそうです。映画のロケ地や舞台を紹介するコンテンツや、ロケ地や舞台を旅行するためのプランを紹介するコンテンツなどをつくろうと、考えることができます。
SNSの活用方法も、ペルソナをもとに考えることができます。
柊子さんは、よく使うSNSにInstagramを挙げているため、Instagramとウェブサイトを連携させることや、SNSはTwitterやFacebookよりも、Instagramの運用に力を入れよう、と考えることができます。
まとめ
マーケティングの世界で重要視されるペルソナは、Webマーケティングにおいても活用すべきマーケティング手法です。
ウェブサイトの制作、運用をはじめるとき、こんな人に訪れてほしいな、こんな人を集めたいな、などのぼんやりとしたターゲット像を抱いている人は多いでしょう。ぼんやりとしたターゲット像を、ペルソナを設定し明確にすることで、より効率のよいWebマーケティングをおこなうことができます。
チーフエディター リサ
横浜市在住。 学生時代よりウェブメディアを複数運営していた経験を生かし、株式会社Lippleで編集長として勤務。ライティングだけでなく、ウェブサイト運営・分析も行う。年間100本以上の映画鑑賞がライフワーク。ピカチュウが大好き。
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